為替のお話

皆様、いかがお過ごしでしょうか。

 

マニラに滞在中のO2でございます。

 

最近、円高ドル安が進行していますね。

年初と比較すると、5%くらい円高になっています。

 

弊社のお客様にとっては、円高になればなるほど、持ってくるJPYが少なくて済むので良いのですが、私の給料はHKDで支払われていますので、個人的には複雑な気分です。

 

まぁ、HKDのままで持ってるのでいいですけど…たぶん、HKDが暴落することはないでしょうから、CNYやPHPを持っているより安心です。

 

金融・経済の世界では、HKDは国際的に両替・流通可能なハード・カレンシーと呼ばれるのに対して、例えばCNY、MOP、PHPなどは国内の流通に限られるソフト・カレンシーと呼ばれます。

 

HKDがなぜハード・カレンシーと呼ばれるかというと、発行する際に、それに相当する額のUSDを準備しなければならないカレンシーボード制を採用しているからです。

 

要は、自分の預金残高の範囲内で小切手を振り出しているようなものなので、不渡りになることが無い(=信用度が高い)ということです。

 

対して、ソフト・カレンシーは、その国の裁量で発行しているので(準備金の裏付けがない場合がある)、国内の流通に限定され、国際的な信用度が低くなりがちなので、通貨政策をミスると一気に暴落する可能性があります。

 

なので、そのような国々(だいたいが発展途上国)は、自国通貨をUSDに連動させるドルペッグ制を採用して信用度を補完する場合が多いです。

 

USDと連動しているなら安心じゃんと思うかもしれませんが、ソフト・カレンシーの国がこれをやっていると暴落する危険がメッチャあります。

 

それの最たるものが20年くらい前に起こったアジア通貨危機です。

 

当時、アジアのほとんどの国々は発展途上国で、経済発展したいけどお金無いから、先進国がうちに投資してくれないかな~と思っていたわけです。

 

でも、経済基盤が弱く、政治も不安定なので、自国通貨が激しく変動する状況でした。

 

で、ドルペッグ制を採用して自国通貨をUSDに連動させて、自国通貨の安定を図り、海外からの投資を呼び込んだわけです。

 

だって、為替が激しく変動する国に投資したいと普通思わないでしょ?

 

そんなこんなで最初はうまくいっていて、みんなハッピー!だったのですが、アメリカが自国の経常赤字を解消するために、「強いドルにする!」とか言い出して、ドル高政策を始めちゃいました。

 

すると、ドルペッグ制を採用している国は自国通貨を買って、USD高と連動させないといけないわけです。

 

でも、元々お金が無い国々だから、通貨高を維持させるのは大変なわけです。

 

しかも、アメリカのドル高政策に従って、仕方なくやってるだけなので、自国の経済成長が伴ってない、要は財政は火の車状態だったのです。

 

つまり、実体経済に対して、通貨が過大評価されていた(正確には政府によって無理に買われていた)わけです。

 

で、株や不動産と同じように過大評価されているものは、いつか下がるわけです。

 

自然に下がるなら問題ないのですが、金融の世界には「空売り」という手段があって、自ら売りを仕掛けることもできます。

 

で、頭が良いというか、悪いこと考えるのはいつも欧米のヘッジファンドなのですが、「過大評価されている通貨に空売りを仕掛ければ大儲けできる。仮に失敗しても、ドルペッグ制を採用しているので通貨が上昇していき儲かる。どっちにしろ…….儲かる!」と閃いちゃったわけです。

 

で、「資金の潤沢な欧米ヘッジファンド VS 全然のお金が無いアジア諸国」の「売り VS 買い」の天下分け目の決戦が始まったわけです。

 

結果は、ヘッジファンドの圧勝。

 

これにより、タイ、インドネシア、韓国はパンクします。その他の国々も相当ダメージを受けました。

 

香港も、もちろんダメージを受けましたが、HKDを死守しました。なぜなら、冒頭で言ったようにカレンシーボード制を採用していたからです。ドル高に連動させて、HKDを買っていたのですが、あくまでも自己資金の範囲内でやっていたわけです。なので、他国と違い資金的に十分な余裕がありました。

 

ヘッジファンドはHKDを仕入れて(正確には他の金融機関からHKDを借りて)は売りを繰り返しているわけですが、香港政府がそれを全部買ったので、市場のHKDは品薄状態になります。

 

品薄になると、一般的にプレミアがついて、高い値段を払わないと手に入れられないわけです。IQOSとか嵐のライブチケットとかそうでしょ?

 

お金の貸し借りの場合は、金利ですよね。金融機関同士の場合は、翌日物(オーバーナイト)金利と言います。

 

その当時は300%以上に上昇しました。誰が借りるねん!

 

というわけで、ヘッジファンドは仕入れコストがかかり過ぎて儲からないので、撤退せざるを得なくなったわけで、HKDは死守され、香港に平和が訪れたのでした。めでたし、めでたし。

 

まぁ、ホントはこの後、アジア各国はこの通貨危機で受けたダメージのせいで、長引く不況に突入するわけですが、それはまた別のお話。

 

ちなみにその教訓から、現在はほとんどの国が、ドルペッグ制を廃止し、変動相場制に移行しているので、ご安心を。まぁ、安心かどうかはその国次第ですが…

 

香港は現在もドルペッグ制ですが、カレンシーボード制を採用しているので、私は信用しているというわけです。

 

皆様の中には、多数の外貨を保有されている方もいらっしゃるかもしれませんが、いつの間にか二束三文になってしまう可能性もありますので、ご注意を。

 

それでは本日はこのへんで。

 

Good Luck!!

 

 


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